歯科矯正は子供のうちに行ったほうがいいか

骨格の問題を除いて歯並びをよくするためには、虫歯にしないことが一番です。特に歯と歯の間の虫歯となると歯並びに影響が出ることもあるので、定期的な検診が必要です。そして、虫歯の治療に関してはなるべく早く行うことを心がけます。また、かみ合わせが悪いと噛む力が低下し、消化器系の負担が増えたり、言葉の発音やあごの発育にも少なからず影響が出るので注意が必要です。

ただし、子供の歯並びやかみ合わせが気になるからと言って、すぐに治療が必要かというとそうでないケースもあります。本当に必要かどうかを親として確認していくことが大事です。まずは、かかりつけの歯科医に相談するのが一番ですが、そもそもそのかかりつけ医に歯科矯正の知識があるのかを見極めなければなりません。一般的に矯正治療のスペシャリストといわれる歯科医は、虫歯や歯周病の治療を行わないことがほとんどです。

矯正で抜歯が必要な場合でも、一般歯科を専門とする医師を紹介し、難しい抜歯なら口腔外科にたけている医師により抜歯をしてもらった後で治療を行います。歯科医療も進化していて専門の分野に特化してきており、何を得意としている歯科医なのかを見極めていくことが大事です。歯科矯正は年齢が早ければ早いほどいいというような情報もありますが、すべてのケースにおいて、入試や混合歯列の段階で治療を進めてもいいというわけではありません。乳歯のと永久歯が混ざっている混合歯列の段階とは、小学校低学年から中学年までの6歳から10歳ぐらいまでを指し、永久歯がすべて生えそろうのは12歳ごろですので、それ以前の歯科矯正は注意が必要です。

この乳歯や混合歯列の段階でおこなわなくてもいい治療があり、子供の歯の歯並びというのは成長とともに変化していきます。乳歯が抜けて永久歯が生えてきた時にどう変化するかは、歯科矯正の知識がある医師ならわかることです。10歳以前に歯並びが悪かったとしても、永久歯が生えそろうときには治っているケースもあります。早い時期に矯正治療を行ったほうがいいケースかそうでないかは、矯正治療のスペシャリストであれば実際に子供の歯を診て明確に答えてくれます。

また、子供のうちに矯正を行って、将来、大人になってからもう一度矯正が必要になるかどうかの判断も可能です。加えて、本当に子どものうちに矯正が必要であれは、その時期に行わないと将来どうなってしまうのかという予測に関しても説明してくれます。日本の歯科医師の免許の仕組みでは歯科矯正の基本的な知識しかない歯科医でも矯正の看板を掲げることができ、矯正治療の看板を掲げている歯科のうち大学卒業後に専門的な知識を勉強してスペシャリストといえる医師がいるのはおよそ2000から3000程度です。矯正治療をしたらどうなるのかという将来の展望を持たずに治療がなされるのは非常に危険なことです。

10歳以下の矯正治療は治す必然性のあるものだけ行うことが重要になります。乳歯は6歳ごろから抜け始め、12歳から13歳ですべて永久歯に生え変わります。入試のほうが圧倒的に多い10歳までに歯並びをいじるというのは非常に難しい治療です。歯並びは発育によって変化するので、成長発達による自然な変化を予測して矯正治療を行う必要があるからです。

それなのに、一律に歯科矯正は早いうちに行ったほうがいいとしてしまう歯科医には注意しなくてはなりません。子供のころに歯科矯正の治療をしたほうが期間も短く、費用も安いので早いうちにと考えてしまいがちですが、一概にそうとは言えません。早くに治療を行ったほうがいいというケースかどうかは、矯正分野におけるスペシャリストによる正しい見極めが必要です。子供のころに歯科矯正をしておけば、歯を抜かなくても済むというのは誤った情報です。

小さいころから歯並びをいじることで歯が後ろに行くので、一見よさそうに思えますが、かえって問題を抱えてしまうケースも少なくありません。中には治療したことで、大事な大臼歯を抜かざるを得なくなってしまうこともあるので注意が必要です。子供の歯科矯正というのは非常に難しい分野です。いろいろと落とし穴があり、成長過程にあるので、どこに目標を置くか見誤る可能性があります。

きちんとした設計図を描くことなく、とりあえずやってみようという気持ちで子供に矯正治療を受けさせたら、それこそ大変です。たとえ、何とか歯が並んだとしても、将来、すべて永久歯に生え変わり大人になったときにどうなるかを予測していない治療なら、大人になっても治らなかったり、戻ってしまう可能性もあります。そうなれば、同じクリニックで治療してもらうことはほとんどありませんし、そこでの治療が原因なのかすら気づけないかもしれません。これは、本人にとっても医師にとってもよくないことです。

そのため、矯正の知識をしっかりともち、子供の歯科治療にも詳しい歯科医を選ぶことが親としての使命になります。子供のころに矯正治療をしたほうがいいケースというのももちろんあります。下のあごのほうが前に出てしまう反対咬合、いわゆる受け口のケースでは、10歳よりも前に一度治したほうがいこともあります。特に歯の生える方向が悪いことで受け口になっている人は、10歳よりも前に治せば再発の可能性が低いことが多いです。

一方で、骨格的に下あごが大きくなってきてしまう遺伝的要素を持っている人は、早い段階で治療をしても思春期になって再発してしまいます。これは思春期における成長により、身長がぐんと伸びるタイミングで遺伝的要素が現れるからです。下あごというのは、手や足の骨と同じ長管骨といわれる骨でできているので、身長が伸びる時期と下あごが伸びる時期が同じなのです。だからといってこのようなケースに対して、10歳以前に矯正を決して行わないというわけではありません。

矯正を専門に行い経験のある歯科医ならば、その人の受け口が骨格の問題によるものなのかを判断できます。たとえ、再発するとわかっていても、本人や両親からの希望があり、見た目の問題で苦しんでいるようであれば、矯正をおこなうことも可能です。多感な小中学生の時期ですから、再発を理解したうえで、治療をすることもあります。歯科矯正の治療の効率からすれば、骨格が要因で反対咬合になってしまう人に、幼いうちに治療を施しても意味はありません。

後から振り返ってみれば、時間とお金の無駄だったと後悔することもあります。しかし、審美的に子どもが傷つけられていたり、そのままにしておくのは親としてかわいそうだと感じるようなケースでは治療に踏み切ることもあるわけです。それぐらい、歯並びやかみ合わせというのは見た目や顔の印象に影響するものでもあります。しかし、問題は矯正治療のスタート前に再発する可能性があるということを本人やその家族がきちんと説明してもらえたかどうかにあります。

加えて、その説明に対して納得して治療を受けたかどうかです。子供の時期のほとんどの矯正治療には、歯並びや成長、発育で変化する骨格の問題や歯そのものの問題が混ざっています。そのため、乳歯が混在している子供のころの治療に関しては、矯正を専門とする医師に相談することが大事です。そうすれば、ある程度将来を見越した効果的で無駄のない治療を選択することができます。

そんなケースであっても早い時期から始める必要があるとごり押しするようならよく考え、ほかの方法がないのか模索することも大事です。

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